「慰安婦」・日韓>12/28合意推進と拒絶と

发布者:发布时间:2016-05-13浏览次数:224

 予想通り、韓国総選挙後に、韓国政府は「慰安婦」財団設立に向けて動き出す構えです。韓国内は壮絶なバトルになりそうです。日本政府はさっさと10億円送って、韓国側で潰し合いをさせて日本は漁夫の利を得よ・・・と前駐韓大使は説いています。



2016年05月12日 22時00分 読売
慰安婦合意、日韓で「評価」隔たり…共同調査

読売新聞社と韓国日報社は、慰安婦問題を巡る日韓合意などに関して共同世論調査を実施した。
日本では昨年12月の日韓合意を「評価する」が49%で、「評価しない」の38%を上回った。一方、韓国では「評価しない」が73%に上り、「評価する」は21%にとどまった。韓国で合意に強い不満が示されたことは、両国政府による今後の合意履行に影響を与えそうだ。
合意内容に関する両国の評価にも食い違いがみられた。今回の合意で慰安婦問題を最終的に「決着させるべきだ」との回答は日本で74%に達したが、韓国では23%に過ぎなかった。
日本が撤去を求めているソウルの日本大使館前の慰安婦を象徴する少女像についても、日本では「撤去すべきだ」が62%で多数だが、韓国では「撤去する必要はない」が87%を占めている。



2016.05.11 21:55 ハンギョレ

挺対協、慰安婦支援財団の設立を拒否
水曜集会で「12・28合意」正面から批判

ユン・ミヒャン韓国挺身隊問題対策協議会常任代表が11日昼、ソウル鍾路区で工事中の日本大使館前で開かれた第1230回日本軍「慰安婦」問題の解決のための定期水曜デモで、慰安婦被害者3人の日常を取り上げた映画『謝罪』のポスターを持って日本の公式謝罪を求めている=聯合ニュース


「日本政府が法的賠償ではないと断言したお金で被害者を懐柔するもの」

「市民の力で財団設立」の意向明らかに


外交部が12・28合意による後続措置として、来月に韓日の日本軍慰安婦被害者支援のための基金設立計画を発表したことに対し、韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)が「日本政府が法的賠償ではないと断言したお金で被害者を懐柔するもの」として拒否の意思を明らかにした。
挺対協は11日、ソウル鍾路(チョンノ)区中学(チュンハク)洞の駐韓日本大使館前で行われた水曜デモで、「韓国政府は、被害者の要求を無視して、彼らだけで合意を採択しておいて、今さら(慰安婦被害者)ハルモ二(おばあさん)と家族を個別に訪れ、日本政府が公式に謝罪したものだと嘘をついている」として、政府レベルの財団設立計画に同意できないという意向を示した。
挺対協は前日に発表した立場表明でも「『平和の少女像』の撤去を要求しながら、10億円の拠出についても沈黙している日本政府に代わって、韓国政府がなぜこのように(積極的に)乗り出しているのかが疑問だ」と批判した。
挺対協は、12・28合意が日本軍慰安婦被害者と支援団体の要求を反映しなかった拙速な「談合」だとし、「市民の力で推進している日本軍慰安婦のための正義と記憶の財団の設立を通じて、韓日政府が回避している被害者の名誉と人権の回復、真実の究明と正義の実現を、市民の力で正しく進めていく」と強調した。
これに先立ち、外交部は5月中に慰安婦被害者支援財団設立準備委員会を発足させ、日本政府の支援金10億円の用途についても、被害者支援を中心に行われる予定だと発表した。
パク・スジン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr



2016.05.11 00:48 ハンギョレ
韓国政府、慰安婦財団に予算支援しない方針

日本政府の予算だけで責任を履行 財団事務所の賃貸と人件費は支援

父母の日4日前の5月4日、ソウル鍾路区の日本大使館前で開かれた第1229回日本軍「慰安婦」問題の解決に向けた定期水曜集会でキム・ボクドンさんが女学生から贈られたカーネーションを胸につけている=キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社


韓国政府が、日本軍「慰安婦」被害者問題と関連した韓日政府の合意(12・28合意)に基づき、上半期中に設立予定の慰安婦被害者支援財団の事業に、政府予算を使わない内部方針を決めたことがわかった。
外交部当局者は10日、「財団に政府予算を支援するのは、今回の韓日合意の趣旨からして、今の段階では検討されていない」と述べた。
韓日政府は、12・28合意で韓国政府が設立する財団に日本が10億円(約100億ウォン)を政府予算で、一度に拠出することにした。しかし、この資金だけでは「すべての慰安婦の名誉と尊厳の回復と心の傷を癒すための事業」を合意の趣旨に沿って体系的かつ持続的に展開するのは難しいと指摘されてきた。政府は、財団の主な事業として、被害者への個別支援、追悼・教育事業、追悼館の建設などを取り上げてきた。
財団の事業に政府予算を使わない方針と関連し、外交部当局者は「金額の多少にかかわらず、日本政府の予算で責任を履行するという意義を生かしていきたい」と説明した。「日本政府の責任の履行」という名分を重視するということだが、財団の事業が慰安婦被害者への個別支援レベルを越えるのは難しいだろうと懸念されている。
政府は、財団の直接事業ではなく、財団事務所の賃貸と財団の人件費などは、政府の予算を使う計画だ。
イ・ジェフン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)



2016/05/10 14:04 聯合ニュース
慰安婦被害者支援財団 上半期中の設立目指す=韓国外交部

【ソウル聯合ニュース】韓国の外交部当局者は10日、記者団に対し、昨年末に日本と合意した旧日本軍の慰安婦被害者を支援する財団の設立について、「上半期(1〜6月)中の設立を目指し、(準備を)進めている」と明らかにした。財団の設立に先立ち、財団設立準備委員会を発足させる予定という。
同当局者は準備委について「5月中に発足させる計画」と話した。その上で、「準備委は(財団の)定款作成や設立登記、具体的な事業の内容策定などについて準備する」と説明した。
日本政府が拠出する10億円については、「記念事業や記念館、追悼碑(の設置)なども含まれるが、慰安婦被害者支援を中心に使われる」として、「建物を建てるわけではなく、行政費用も最小限に抑える」との方針を示した。
支援の対象は「亡くなった方と生きている方を分けることはできないのではないか」と述べ、生存者と死亡者いずれも対象にする考えを明らかにした。
韓国政府に登録された慰安婦被害者は238人で、このうち生存者は44人となっている。
日本政府が拠出する10億円とは別に、韓国政府の予算で追加支援を行うことに関しては、「現段階では検討していない」とした。ただ、韓国政府が1990年代から生活安定特別法を基に行ってきた慰安婦被害者への支援は続けるという。

2016年05月10日14時16分  中央日報日本語版
韓国政府、今月中に慰安婦支援財団の準備委発足…「死亡者・生存者」全員が支援対象

  韓国外交部は韓日の日本軍慰安婦問題の合意にともなう被害者支援のための財団設立に関して今月中に財団設立準備委員会を発足する予定だと明らかにした。
  外交部当局者は記者たちに会って「今年の上半期中に慰安婦支援財団を設立することを目標に推進している」として「財団設立に先立ち、今月中に財団設立準備委を発足する予定」と明らかにした。
  当局者は日本政府が慰安婦被害者支援のために拠出することにした10億円の使い道に関して「記念事業・記念館・追悼碑といったものも含まれるべきだが慰安婦被害者支援を中心に使われる」としながら「行政費用などは最低限に抑える」と説明した。
  また慰安婦被害者への支援は、死亡者や生存者を特に区分せず全員の支援をすると明らかにした。現在韓国政府に登録された慰安婦被害者は238人で、このうち44人が生存している。



(2016/05/10-16:20)時事

月内にも準備委発足=元慰安婦支援の財団−韓国政府

【ソウル時事】韓国外務省報道官は10日の記者会見で、昨年末に日韓が合意した元慰安婦を支援する財団の設立に関し、「上半期の設立を目標としており、月内にも準備委員会を発足させる方針だ」と述べた。
報道官は「合意履行に当たって最も重要なのは被害者の意見」と強調。関連省庁の当局者が元慰安婦を訪ね、合意内容の説明を続けていることを明らかにし、「財団設立に際し、被害者の意見が十分反映されるよう努めている」と語った。



2016/5/10 22:08 日経
26人、支援財団に肯定的 韓国政府調査

【ソウル=小倉健太郎】韓国KBSニュースは10日、昨年末の日韓合意に盛り込まれた元従軍慰安婦の支援財団について、既存支援団体の施設で暮らしていない元慰安婦の意見を韓国政府が調査したと報じた。29人のうち26人が財団に肯定的な回答をした。年初に実施した前回調査では18人のうち14人が合意に肯定的な評価をしていた。
韓国政府は財団の支援対象を現在44人いる生存者に限定せず、韓国政府に登録された被害者238人の遺族も含める。財団は韓国政府が設立し日本政府は10億円を拠出する方針。韓国政府は財団への予算支援を検討していないという。



2016年05月10日 09:55 WEDGE Infinity

惨敗でも変わらぬ朴大統領 改めて読む慰安婦合意の中身と展望 -        
澤田克己(前毎日新聞ソウル支局長)

朴槿恵大統領は、軍事独裁を批判されながらも韓国に高度成長をもたらした朴正煕大統領の娘である。逆境に見舞われても決して膝を屈しようとしない強い姿勢は、やはり父親譲りなのだろうか。与党セヌリ党の惨敗に終わった4月の総選挙を受けた朴槿恵大統領の言動を見ていると、そんな思いにとらわれる。総選挙で負けたことへの反省など全く見せず、自らの信念を貫く姿勢ばかりが目立つからだ。 
日本での関心はといえば、慰安婦問題を巡る昨年末の日韓合意への影響に集中している。「日本との再交渉」を公約に掲げた野党の勝利で合意履行が難しくなるという見方もあるが、それは単純すぎる。
合意の履行は、もともと簡単なものではなかった。そうした意味で、韓国側の事情は総選挙の前後でそれほど大きく変化していない。世論の反発は強いけれど、朴大統領は強行突破しようとしている。ただし、限界はある。大まかに現状を見れば、そういうことだ。
「これからも変わらない」と宣言した

 朴大統領は総選挙から2週間ほど後の4月26日、韓国メディア46社の編集局長や報道局長を昼食に招いて懇談会を開いた。出席者からの質問に答える、事実上の記者会見である。
細かく紹介するよりも、翌日の韓国各紙の社説を見ると内容が分かるだろう。
最も保守的で朴大統領よりの姿勢が目立つとも言われる朝鮮日報は、「選挙結果に対する責任問題には一言も言及しなかった。(中略)国民が期待したのとは距離がある選挙結果への評価だと言わざるをえない。このように他人の話をするかのようにしていたのでは、どれだけの国民が納得したか疑問である」と苦言を呈するとともに、「国会と妥協しないという従来の態度に大統領が固執するならば、際限のない摩擦と衝突が繰り返されることになる。国政の混乱は避けられない」と懸念を表明した。 同じく保守系の東亜日報も、「惨敗しても大統領の考えに大きな変化が見られないのは憂うべきことだ」と指摘する。
進歩派の各紙は、当然のことながらさらに厳しい。ハンギョレ新聞は「何も変わっていない。大統領は独善と傲慢という部屋に高い壁を作り、そこから出てこようとしない」と指弾。京郷新聞は「朴大統領は(総選挙のあった)4月13日以降も変わっておらず、これからも変わらないということを公開の場で宣言した」と指摘し、「民意を最後まで否定して変化を拒否するならレームダック(死に体)が前倒しでやってくることを知らねばならない」と主張した。筆者は、朴大統領が4月18日に初めて選挙結果に言及したことを受けて「朴大統領の姿勢はすべてにおいて何も変わっていない」という趣旨のコラムを書いた(月刊「アジア時報」5月号所収)。この懇談会を見ると、やはり朴大統領は何も変わっていないのである。
少女像に関する発言は変わったか

 日本ではこの時、慰安婦合意に関する発言が報じられた。朴大統領は懇談会の出席者から合意について聞かれ、こう答えたのだ。
「被害者の方たちが1人でも多く生きている間に問題を解決し、日本から謝罪を受け、さらに、その方たちの生活に助けとなる支援を行う。そうしなければならないのではないか。それで先般、難しい合意をみた。安倍晋三首相と会談した際、このように難しい状況下でなしとげた合意について話をした。本当になぜこの合意をしたのかという、その精神、趣旨、そういったものに反することのないようにしながら、財団の設立などという後続の措置を誠実に履行する。
そして、未来の世代にもこのようなことを教えていかねばならない。(安倍晋三首相と)そのような話をし、そういった内容を確認した。少女像の撤去と(日本政府による財団への10億円拠出が)つながっているとか、なんだとか言われているが、これは本当に合意で全く言及もされていない問題だ。そのようなことをもって扇動したらいけない。被害者の方たちの助けにならない。それは、まったく事実ではない。そのようなことで混乱を引き起こしてはならない。日本も努力して早く後続措置が行われ、その過程で被害者の方たちや関連団体とコミュニケーションを取り続けながら、早くしようと思っている。さらに遅れて良いことではない。もう既にとても遅れているのだ」(聯合ニュースによる)
これをもって朴大統領が態度を変えたということはできない。他の国政課題はすべて従来路線に固執しているのに、慰安婦問題だけ変わるなどということはありえない。慰安婦問題でも従来路線を突き進むけれど、少女像の移転はそもそも約束されていないということを改めて確認したにすぎない。
朴大統領は、野党や世論の反発が鎮まらなくても合意履行の次のステップである財団設立へと突き進もうとしている。この発言を正確に読めば、そういう意味になる。韓国政府は実際、5月中に財団設立の準備委員会を作り、6月末か7月初めには財団を立ち上げようとしているのである。

少女像移転は「逐条的に確認しあったわけではない」
 安倍政権も、そんなことは理解しているということだろう。萩生田光一官房副長官は翌27日の記者会見で、「今回の合意において韓国側は日本政府が大使館前の少女像に対して懸念を持っていることを認知し、韓国政府も適切に解決されるよう努力をすることとなっている。他方、合意の前提かというと、そういった細かいことを逐条的に確認しあったわけではない」と述べた。(質疑は「動画」の4分30秒目くらいから) 萩生田氏は「やはり、この問題を最終的かつ不可逆的に次世代に引きずらない。お互いに日韓新時代の新しい関係を築いていこうというのが日韓合意の大きな意味だから、そういう意味では細かいことの一つに含まれていると私は認識している」とも述べている。
日韓新時代を築こうという合意の意味を考えれば少女像移転は当然やってもらいたいが、確実な約束になっているわけではない。歯切れの良くない萩生田氏の発言趣旨をまとめれば、こんなところだろう。
ちなみに質問をした記者は、朴大統領の発言について「財団の出資金の前提条件という意見をけん制した」ものだという自らの考えを示した上で、日本政府の受け止めを聞いた。「意見をけん制」というのはユニークな表現である。
「日本との再交渉」公約には重みがない

 日本では今回、日本との再交渉を公約に入れた最大野党「ともに民主党」が勝利したことで、慰安婦合意の履行に大きな影響が出るのではないかという懸念が語られた。
だが、韓国の政界関係者は「総選挙での野党の公約なんて誰も気にしない」と口をそろえる。中には、「だから韓国の政党政治はまだまだなんだ」と憤る政治学者もいた。
それに、今回の総選挙では政策は一切と言っていいほど争点になっていない。与野党とも来年末の大統領選へ向けた党内の陣取り合戦に忙しく、与党の方が「より多く負けた」だけというのが実相である。経済や北朝鮮といった喫緊の課題すら争点にならなかったくらいであり、ましてや慰安婦問題を含む対日政策を気にする人など誰もいなかった。
だからこそ、「ともに民主党」の選挙戦を指揮した金鍾仁・非常対策委員会代表が選挙期間中に慰安婦合意について「国家間の合意であり、修正できる状況にはない」と述べたり、選挙後に別所浩郎大使と会って「履行を急がねばならない」と話したりということが起きるのである。別所大使に対する発言の時には党の広報が「党の立場には変わりない」と釈明をしたが、それ以上は問題にならなかった。
ただ、金鍾仁氏の場合は党の路線から外れても仕方がないとも言える。氏はもともと全斗煥政権で社会福祉政策を担当した穏健保守であり、金大中・盧武鉉両氏の流れをくむ党のカラーとは異質だからだ。
金鍾仁氏は、次期大統領選へ向けた思惑含みで昨年末に党が分裂するという危機に陥ったことを受けて、総選挙へ向けたイメージ一新のために外部から迎えられた。韓国政界でも「ウルトラC」級の手ではあるが、それでも特に問題視はされない手法だ。今回の選挙で政策が争われていないことの傍証とも言えるだろう。

合意非難の国会決議は採択される可能性も
 そうは言っても、与党が過半数を割り込んだのだから朴大統領への打撃は大きかろうと思う読者も多いだろう。ただ、現在の韓国国会では過半数には大きな意味がない。2012年に改正された国会法(通称・国会先進化法)によって、予算案以外の法案処理には5分の3(180議席)の同意が必要とされたからだ。
李明博政権が数に頼んだ強行採決を繰り返したことへの批判が強かったため、同年末の大統領選をにらんで朴槿恵氏が主導して行った法改正だった。当時から、韓国の政治風土と選挙制度の下では一党で5分の3を占めるのは不可能に近いと見られており、だからこそ与野党が落ち着いた協議を尽くして法案処理するようになるという理想論が語られた。
しかし実際には、重要法案になればなるほど与野党は激しく対立する。朴大統領が妥協をよしとしない対決型の指導者であることもあって、2013年に発足した朴槿恵政権下の国会は「植物国会」と揶揄されるような状態が続いてきた。与党は過半数を超えていたが、5分の3は持っていなかったからだ。おかげで朴政権は、内政でまったくと言っていいほど成果を挙げることができていない。
今回の選挙で第1党となった「ともに民主党」は123議席、与党セヌリ党は122議席で、どちらも過半数(151)にすら遠く及ばない。第3党である野党「国民の党」が38議席。「ともに民主党」とセヌリ党が協力しなければ5分の3というハードルをクリアできないが、1年半後に大統領選を控えているという時期的な問題だけを考えても、それは非現実的だ。国会がスムーズに動けない状況は何も変わっていない。
ついでに言うと、韓国の国会は年間100本近い決議を採択しているので、「決議には重みなど全くない」(与党関係者)。国会決議は過半数でいいから、野党が過半数を占めるようになる国会で慰安婦合意の「無効決議」くらいは採択されるかもしれない。だが、それは基本的に朴槿恵政権への嫌がらせにすぎない。過去に繰り返されてきた対日非難決議の場合、日本で大騒ぎになっているのに韓国では全くニュースになっていないということも珍しくなかったのである。

最大の眼目は「ゴールポストの固定」
 さて、最後に合意の中身を改めて確認しておきたい。昨年12月28日に日韓両国の外相がソウルの韓国外務省で記者会見し、明らかにした合意内容は次のようなものである。
すべての前提となる認識は、▽当時の軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、日本政府は責任を痛感している▽安倍首相は、日本国内閣総理大臣として心からおわびと反省の気持ちを表明するーーというものだ。 
さらに両国の約束として、▽韓国政府が元慰安婦を支援するための財団を設立する▽日本政府が財団に10億円を拠出する▽国連など国際社会において相互非難をしない▽合意がきちんと履行されることを前提に、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認するーーことが明示された。 
そして、前述したようにソウルの日本大使館前に建つ少女像について、韓国政府は「適切に解決されるよう努力する」と表明したのである。この項目は、日本側が「少女像に言及しないと国内がもたない」とねじ込んだもので、韓国側は最後まで抵抗を示していたという。
慰安婦問題が日韓関係の中心課題となったここ数年の間に、少女像は日韓両国において正反対の意味合いを持つシンボルと化してしまった。いくら朴大統領が剛腕だといっても、簡単に突っ走れるのは財団設立までだろう。少女像の移転は極めてハードルが高い。それが、専門家の多くが当初から抱いてきた見立てだ。
そもそも合意の意義は、両国が外交交渉を通じて「最終的かつ不可逆的な解決」という合意に達したことを国際社会に発信したことにある。米国や欧州諸国などから歓迎されたことで、合意内容をいじることは日韓ともに難しくなった。「ゴールポストを動かせなくする」ことに最大の眼目があるのだから、少女像問題の解決に時間がかかるのは目をつぶらざるをえない。それが、慰安婦合意の枠組みである。
日本側で一部の人たちが喧伝した「少女像移転も近い」という考えは、もともと幻想にすぎない。韓国総選挙における与党惨敗で日本側の期待値が下がったとしたら、それは合意履行には悪いことではないのかもしれない。



2016.5.5 08:00 産経
【ワールド・インタビュー】
武藤正敏・前駐韓大使「まず10億円を供出すべき。慰安婦像撤去はその後求めればよい」

韓国で4月13日に行われた総選挙で与党、セヌリ党が惨敗した。朴槿恵大統領の支持率も29%(韓国ギャラップ4月22日発表)と、前週より10ポイント急落して就任後、最低となった。求心力を失った朴大統領の政権運営に影響はないのか。昨年末の「慰安婦」合意の履行や軍事情報を交換する際の手続きを定めた「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」の早期締結など、日韓間に横たわる問題は解決するのだろうか。武藤正敏・前駐韓日本大使(67)に聞いた。

−−与党が惨敗したが、今後どんな影響が出るのか
「選挙に強く『選挙の女王』と呼ばれた朴槿恵大統領が、総選挙でこれだけ大敗するということは、やはりレームダック(死に体)化は避けられない。それでも韓国大統領の権限はそもそも相当に強い。国民もみな大統領には一目置いているし、やり方次第ではある程度、支持率の回復は可能ではないか。もっと国民と対話して、国民生活に密着したところで支持率アップの努力をしていくべきだ」

−−死に体化している大統領が日韓「慰安婦」合意を履行できるのか
「総選挙でも争点にならなかった。韓国にとって他にオプションはないのだと思う。昨年末の日韓『慰安婦』合意を、米国が歓迎した。ここであの合意をほごにしたら、米国から『韓国はなんだ』と非難されるだろう。北朝鮮情勢が緊迫している中、中国は頼りにならないし、日米韓3カ国が協力していかなければいけないことは分かっていると思う」

−−合意については、韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)などが強く反対しているが…
「印象的だったのが、今回の合意を、朴槿恵大統領自身が説得しようとしていることだ。合意の無効を訴える挺対協や再交渉を強く求める野党に対し、大統領府は『今回の合意は最善を尽くした結果であり、これを無効といえば、今後どの政府もこうした難しい問題には手を付けられないだろう』と反論した。韓国の世論も『合意に満足しているわけでないけれど仕方ない』という雰囲気になっている」

−−元慰安婦の中には合意を受け入れないという人たちもいるが…
「元慰安婦支援施設『ナヌムの家』に身を寄せる元慰安婦の中には『合意を受け入れる』と言った人たちもいた。その後、周りから引きずり下ろされて発言を撤回している。ナヌムの家に暮らす14人は絶対合意を受け入れないだろう。韓国政府が、韓国に在住する他の元慰安婦18人に直接説明したところ、自分の意思表示ができる人14人は合意を受け入れると言っている。残り4人はすでに自身で判断できなくなっている人々だった」

−−日本が平成7年に設立した財団法人『女性のためのアジア平和国民基金』(アジア女性基金)のときは、挺対協が元慰安婦に支援金の受け取りを拒否するよう圧力をかけたが…
「それでも韓国の元慰安婦61人ががアジア女性基金を受け取っている。最初に受け取った7人は挺対協から、さまざまな嫌がらせを受けたが、それでもさらに54人が内々に受け取っている。54人については、受け取った元慰安婦に配慮して公表してこなかった。今回は韓国政府が財団をつくって実質的にやるのだから、より受け取りやすくなるはずだ。心配なのは慰安婦像だ」

−−慰安婦像の撤去ではなく、移転でも難しいか
「世論調査をみると、慰安婦像の撤去については、韓国人の7割以上が反対している。韓国政府にとって、合意の受け入れと慰安婦像撤去という二正面作戦での説得となると難しくなる。慰安婦像の撤去は入り口では難しい。遺憾ではあるが、出口にせざるを得ない。つまり、慰安婦問題が解決したとき、『問題が片付いたのに日本大使館前に置いておくのはおかしい』という雰囲気に韓国全体がなれば、韓国政府も撤去しやすくなる」

−−自民党内では、慰安婦像が撤去されない限り、10億円を拠出すべきでないという意見も出ているが…
「そういった発言は、慰安婦像の価値を高めているとしか思えない。あまり騒ぎたてなければ、人々の関心は薄れていく。関心のなくなった慰安婦像は、問題解決したときに撤去しやすくなる。日本が慰安婦像に敏感に反応していると、問題が解決しても慰安婦像を置くべきだという話になってしまう。日本は慰安婦像ごときで騒ぎ立てないほうがいい」

−−どうすれば日本の国益に利するか
「もし慰安婦像のために日本が10億円を供出しなければ、恐らく合意はつぶれる。そうなれば挺対協の人たちは喜ぶだろう。自分たちがこの合意をつぶしたと批判されなくてすむからだ。そうなれば挺対協は、全世界のあちらこちらに慰安婦像をつくってまわるだろう。日本は感情的に反発してはいけない。それをやることで日本はどれだけ損をしてきたか」

−−たとえばどんなことがあるか
「日本政府は、慰安婦問題で『強制性』にこだわってきたが、『強制性』があったという証拠はないが、なかったということも証明できない。それを言うよりも、挺対協がいかに慰安婦の史実をねじ曲げているかということを言ったほうが効果的だ。挺対協は、元慰安婦の女性たちの証言のみを根拠に主張している。それは、あくまでも元慰安婦たちの個人的な体験に過ぎない。自分たちの都合のよい部分だけを取捨選択していることも考えられる。挺対協の主張が相当いい加減であることを指摘した方が遙かに効果がある。『強制性』の問題に焦点を絞るから、日本は世界からも批判される」

−−来年末に予定されている大統領選が近づくと、慰安婦合意の履行はより難しくなるのではないか
「だから今年中に10億円を拠出してしまったほうがいい。韓国が受け取ったら、この問題は終結だ。早く受け取らせてしまったほうがいい。お金を供出しないとか言っていると、合意がつぶれ、また蒸し返されてしまう」

−−今回の総選挙で知日派の議員の多くが落選してしまった。韓国国会の中でどんどん知日派が減っているが…
「そういう流れが韓国社会の中でできている。知日派が少数派になり、力を十分に発揮できなくなっているという意味で残念だ。そうなってくると普通の国の外交をしないといけない。つまり議員外交ではなく、外務省の正規のルートを通じた外交だ。日韓関係は国民感情が支配しているが、これからはそういった日韓という特殊なフレームの中でやるのではなく、国際的視野で日韓関係をやっていくことが必要だ。客観的に事実を見つめ合っていく。そういう習慣を作らないといけない」

−−具体的に日本はどう韓国と接していくべきか
「日本も言うべきことは、韓国に言ったほうがいい。今までは、何かと韓国に遠慮してきた。そうした関係が続いたことが、日本の嫌韓感情をもたらした。韓国の反日感情よりも、日本の嫌韓感情のほうが幅広く、深くなってきている。韓国の人たちにもそれを知ってもらわないといけない」

−−今回の選挙結果は、今後の日韓関係にどう影響を与えるか
「GSOMIAは難しくなったと思う。野党が政権をとったらまず無理だろう。韓国は、世界の動きをわかっていないし、将来のビジョンも描けていない。韓国はこれまで中国の覇権的な構想にのみ込まれて、おべっかを使ってきた。韓国はそういった事大主義を捨て、もっと自立して自国の国益を追求するべきた。そうなれば日米との関係も、もっと近づくことになるだろう」

(了)

◇ 武藤正敏(むとう・まさとし)氏 昭和23年生まれ。47年、横浜国立大卒業後、外務省入省。北東アジア課長や駐クウェート日本大使などを歴任。語学研修を含めると韓国赴任は5度、通算でおよそ12年に及ぶ。平成22年に、キャリア官僚の中で韓国語研修を受けた「コリア・スクール」初の駐韓大使として赴任し、24年に大使退任。25年、韓国政府から、修好勲章光化章を授与された。
昨年5月に出版された「日韓対立の真相」(悟空出版)に続き、今年4月にはその第二弾として「韓国の大誤算」を刊行した。